かわさきマイスター活動レポート
寝具製造 内海正次(うつみしょうじ)さん
誰もが毎日使う寝具を作っている内海さんは、この道60年の大ベテラン。布団作りの流派のひとつ、冨田屋(とんだや)流の技能を継承し、手作りの綿布団の良さを伝えます。
この日会場で販売したのは、座布団と、25分の1で作ったミニチュアの婚礼布団セットと「かいまき」でした。ミニチュアはなんとも可愛らしく、来場者の注目を集めていました。
この世界は“角綴じ”から教わるということで、特別に見せて頂きました。馬のしっぽのように張りをもち、ピンとたゆむのが腕のいい証拠だそうですよ。
また、座布団に表裏があるのはご存じですか? 写真をよく見ると、糸が縫い目の上にあるのがわかると思います。糸があるほうを上にして使います。お客さまに座布団を勧めるとき、知っておきたいことですね。
優しく、丁寧に、確実に。
これこそマイスターの技
では、いい座布団はどこで見分ければよいのでしょうか。それには、真ん中の糸を持って持ち上げることを教えていただきました。
綿が均等に入っていれば、座布団はバランスをとって水平になります。綿を均等に入れることは、座布団が小さくなればなるほど難しいそうですが、内海さんの作った座布団は、ミニチュアサイズであっても、このように水平になります。まさに匠の技なのです。
寝具はさすがに持ち上げるわけにいきません。そこで、敷き布団なら三つに折って立たせてみてください。寝具が立つとは想像しがたいのですが、きちんと綿づくりして入れてあれば、見事に立つそうですよ。
それともうひとつ、縫い目を見ること。隠し縫いと言って、糸が見えないように縫い合わせてあれば丁寧な仕上がりがされているということ。そして、寝具を長持ちさせるためには、カバーをかけて、綿と相性のいい天日干しをすることだそうです。
「お客さまの寝心地がいいかどうかしか考えていない」という内海さんの作る布団は、いわばセミオーダーメイドです。体格がいい方には綿を多めに入れ、お年寄りだと軽くするために少なめにします。
こまやかな心遣いで作られた布団のファンは多く、この日のブースにも、内海さんの布団を愛用しているたくさんの方々が立ち寄って、声をかけていらっしゃいました。
梅型、ダイヤ型、亀型と座布団にも種類が
婚礼布団とかいまきのミニチュア
家業を継いで、お父さんから厳しく教わった寝具作り。力も必要とする重労働ですが、お客さまに喜んでもらえるものを常に作り続けます。道を歩いていても声を掛けられることがあり、そのときこそが「やりがいのある仕事だ」と感じる瞬間です。
ふとんのうつみ川崎市多摩区西生田2-1-26
TEL044-954-2200
10:30~18:30、日曜・祝日休み
http://www9.ocn.ne.jp/~futon-u/ 取材を終えて…
「かわさきマイスター」に認定されるのは、市民生活を支える「もの」をつくりだしている現役の匠。つくりだされたものは市民の生活に取り入れられてこそ生きてきます。
石井さんと内海さんは実はご近所。石井家の布団はすべて内海さんが手がけ、内海家の刃物はすべて石井さんが研いでいるそうです。
かわさきマイスターの技は、決して鑑賞するためだけのものではありません。自分の日常に寄せることで、さらにその技が輝いていくことになる、そんなふうに感じた1日となりました。