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かわさきマイスター紹介

家具技能士 昼川 捷太郎さん

素材の良さ生かした家具づくりに挑む

提供:川崎市
「木は生きものです。森林大国・日本の木のよさを伝えていきたい」勤務先のショールームに置いてあるテーブルの木目がつくる模様を指差しながら「美しいでしょう。これはね、ここだけにしかありません。世界にひとつしかないのですよ」と力を込めて話します。家具技能士の昼川捷太郎さんは特注家具のプロフェッショナルです。「特注品」の家具をつくるため自分で鉋(カンナ)やノミなど道具もつくります。つくったことのない注文も、40年以上に渡る経験で対応するという創造性と応用力をもつ、家具づくり、特に箱物の特注品に卓越した技能を保持しているマイスターです。
プロフィール
昼川 捷太郎(ひるかわ しょうたろう)さん

1969年宮内庁をはじめ官庁の「特注品」の家具を製造している大手家具製造会社に入社。箱物の「特注品」づくりの職場に身を置く。1971年に仲間3人で箱物の「特注品」づくりの家具会社を設立。ここでさらに技能を高め、6年後に昼川木工をつくり独立。それから40年、顧客のさまざまな要求に応えている。2008年に新しい職場のplotsに移って家具をつくるとともに、若い人たちの育成にも携わっている平成23年度認定かわさきマイスター。
宮前区在住。plots inc./プラッツ勤務。
これは、昼川さんの技能を紹介する動画です。クリックしてご覧ください。

昼川さんについて教えてください

始めるきっかけは何でしたか?

子どものころから、ものをつくるのが好きでしたね。学校では工作の授業が一番好きで、とても楽しい時間でした。ほかの授業は、あまり勉強をしませんでした。私は、器用ではないのですが、ものをつくるのが好きだったことが、家具をつくる仕事に就くきっかけになりました。
宮内庁はじめ官庁の「特注」家具を作っている大手の家具会社に就職し、いろんな家具をつくる職場があったのですが、箱物の「特注」家具をつくっているところへ配属されましてね。これが、「特注品」の家具づくりに携わるきっかけになったのです。
国会議事堂や皇居などの仕事をさせてもらいながら、技術・技能を身につけさせてもらい、その後会社をやめ、いっしょに仕事をしていた戸沢忠蔵さん(現在・ヒノキ工芸)、秋山利輝さん(現在・秋山木工)と3人で箱物の「特注品」家具会社をつくりました。お二人には、ずいぶん教えてもらいました。6年後、昼川木工を設立し、「特注品」の家具作りに専念するようになりました。

やっていて一番面白いと感じることは何ですか?

私の家具づくりは「特注品」ですから、一度つくった「もの」を二度目はつくらない。世界に1個しかない「もの」をつくり出すのですから、面白いといえますよね。
仕事に入るときは、とても緊張しますし、重圧も感じます。木と切るときなんか、世界にひとつしかいない木を切るのですから、失敗は絶対許されません。「これを切ったら終わりだな」と一瞬思うのです。重圧感で手が止まります。何回も何回も自分に「大丈夫だな?」「大丈夫だな?」と問います。そして自分に「大丈夫だよ」「大丈夫!」と言い聞かせてから、切ります。接着剤を使用するときは、メーカーから接着剤が届くと、自分で試験をします。「これなら大丈夫」と確信してから使用します。
道具を使うときは、(材質の)特徴をつかんで調整しながら使わなければなりません。たとえば鉋の場合、木と鉄で出来ていますから、天候によって(温度、湿度によって伸縮するため)微妙に違ってくるので、木を削るときは(刃の)微妙な調整をしなければなりません。
逆にいえば、私の仕事はこんな手間がかかることをしながら、「もの」をつくりあげているのですから、面白いなと思います。家具をつくる職業は、とても面白い職業ですよ。

長年、継続して技能研鑽に努めることが出来たのはなぜですか? (他の道に行こうと思わなかったですか?)

やはり、「もの」をつくるのが好きだから、良い「もの」をつくりたい、お客さんに喜んでもらえる「もの」をつくりたいと思いながら仕事をしてきたのが、いままで家具づくりを続けてこられた力になっていると思います。なんといっても、自分の仕事で一番やりがいを感じるのは、高いお金を出して買ってくださるお客さんに「ありがとうございます」「良いものをつくっていただいた」といわれ、喜んでもらったときです。
また、まわりの人たちの支えもあったから、継続できたと思います。

苦労したことはありますか?

仕事をしていると、年から年中、苦しいことばかりです。
家具は図面一枚でつくれない。図面にはどうやってつくるかは書いていない。どんな道具を使うかも書いていません。図面は「もの」をつくるために必要な100%を書いていないのです。私の仕事は「特注品」ですから、常に仕様が違います。ひとつも同じ「もの」はありません。たとえば、お客さんの注文した家具をつくろうとして道具をみたら、その家具をつくれる道具がない。それで、道具をつくることになります。お客さんの注文に応える「もの」をつくるために、どんな道具をつくるかも一苦労です。

自分が誇れる、自信のある卓越した技能を教えてください

若いころ飯を食べるのを忘れるぐらい熱中して家具をつくったことがあります。徹夜して家具をつくったこともあります。このころに技能をぐっと伸ばしましたね。
一生懸命、仕事をしてきたことと若いころに教えてもらった基本に立ち返り、経験の応用と創造で「特注品」の家具をつくれる技能をもてるようになったと思います。
私は年間、「特注品」の家具を30~40個しかつくれませんが、お客さんの求める家具をつくれるようになったことが私の誇りです。

ものづくりについて教えてください

ものづくりの魅力を教えてください

私は「特注品」の家具をつくっています。お客さんの意向を聞いて、つくるのですから、それぞれ違いがあります。素材で使う木はいくら探しても同じのはありません。同じのをつくってほしいといわれても、同じ「もの」はつくれません。世界にひとつしかない「もの」をつくるというのも、魅力のひとつです。
なかなか注文されたようにうまくできなくて、手間がかかるときがあります。常に考えながら仕事をしなければ、お客さんの望んでいる「もの」はできません。そういうこともあってか、お客さんに私のつくった家具を喜んでもらったとき、大事に長く使っていただいていることを知ったときはうれしいですね。このことも家具づくりの魅力ですね。

かわさきマスターに認定されて良かった点を教えて下さい

優れておられる人はたくさんいると思います。私のような者が、かわさきマイスターにしていただいて良いのかなと思うこともあります。会った人たちから「(かわさきマイスター認定の新聞記事を)見たよ」といわれ、かわさきマイスターの重みを感じます。認定されてよかったというより、社会的な責任を感じています。仕事も私生活もちゃんとしなければならないなと思います。

後継者を育成するため、何に取り組まれていらっしゃいますか?

若い人たちと仕事をし、私の身につけた技術・技能を若い人たちに教えるようにしています。学校へ行って子どもたちに家具づくりについて伝えたいと思っています。家具づくりをめざす人が少なくなっているので、後継者の育成は私にとっても今後の大きな仕事です。

これから「ものづくり」を目指す方たちへアドバイスをお願いします

家具づくりに器用であることは重要でありません。まず家具づくりに興味をもつことです。良いものをみるようにしてください。家具づくりは創造性を発揮できる、面白い、やりがいのある職業です。お客さんの注文に応えられる職人になるまでの道のりは楽ではありません。苦しいことがあっても志をもち、おごらずにプライドをもって続けていけば、お客さんの注文に応えられる職人として家具がつくれるようになります。

最後にこれからの活動について教えてください

先ほどもいいましたが、なんといっても後継者育成のための活動をしていかなければならないと思っています。若い人が成長していくのを見ると楽しいですよ。今までの経験と技術を伝承し、私を育ててくれた人、業界に恩返しをしたい。かつては人前でしゃべるのは苦手でした。やはり「特注品」の家具をつくるのですから、お客さんの思っていることを理解できるようにしなければならない、そのためには人に会って話しをするのも大切です。営業的なこともしたいなと思っています。

どうもありがとうございました。自分にとって良い家具かどうか見分けるコツを教えてくださいとお願いしたところ、「自分の生活スタイルにあっているかどうか、かっこが自分の好みにあっているかを考えながら家具を見るのが大切なことです。素材を見ることも大切です。無垢材(1本の原木から板や柱を必要な寸法で切り出したもの)は、汚れても鉋で削ってきれいにできます。木の家具は上手に使えば、いつまでもきれいに使えます。長く使ってもらえるとうれしいですね。日本は森林大国です。日本の木の良さを生かし、無垢材でつくった家具をもっともっと多くの人に使ってもらいたいですね。」とお話ししてくれました。
【問合せ先】  
plots inc./プラッツ

■所在地   宮前区東有馬5-25-3
■電話    044-852-0116
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